German Submerged Assault Vessel "NEGER"   ドイツ海軍 半潜航突撃艇「ネーガー」
「ネーガー」のモデルは、こちらからダウンロードできます。 Download of this model is here.  http://www.renova-model.com.pl/index.php?f=free

nerger


IMPRESSION
 ポーランドのペーパーモデル販売サイト提供のフリーサンプルモデルです。
 さすが、精密ペーパーモデルの本場(?)ポーランド製だけあって、パーツの精度も良好で組み立ても比較的楽。
 もっとも、頭部の「チューリップ工法」(私が勝手に名付けました)部分はちょっと難儀しましたが…。
 チューリップの花びらみたいなパーツで三次局面を再現する、ってのは、ペパクラ界ではポピュラーな手法ですが、私はこれを綺麗に作るのが苦手。必ず失敗します。一発で決まったことがありません(笑)

 さて、肝心の模型としてのリサーチ具合ですが、全体的には特に大きな不満はないのですが、ただどうにも解せない点がひとつ。
 それは、スクリュープロペラ。
 このモデルは、「発射する魚雷」の方は、スクリューがちゃんと二重反転式になってますが、「人間が搭乗する方」は、なぜかシングルスクリューに。
 決定的な写真を見つけられなかったので、なんとも言えませんが、両方とも二重反転スクリューと考えるのが自然だと思います。
 でないと、スクリューの回転トルクに負けて、本体が横転しちゃうはず。
 入手できたイラスト資料なども皆二重反転式だったし。
(でも、あえて片方だけシングルにアレンジしてあるのは何か根拠があるのかな、と逆に悩みましたが)
 というわけで、私は「人間用」の方も二重反転スクリューに修正して作りました。

 あとは「魚雷」の頭の信管部分に、実物どおり4本の「触角」を追加。(これは、浅い角度で目標に命中した場合でも確実に信管を作動させるためのスイッチ)

 それから、コクピットのドーム状キャノピーは、絶対透明にしたかったので、添付写真のように消しゴムから(笑)雄型を作り、塩ビ板をヒートプレスして自作しました。
 紙のチューリップで作る窓よりも断然リアルさが違います(そりゃそうだ)ただし、そうすると内部が丸見えになるので、内装をどうしようか、という問題が。
 かなりあちこち探しましたが、内装が判明する写真は皆無。仕方がないので内側を艶消しの黒で塗装するだけでごまかしました。それでも完成すると意外と気にならないことが判明。よかったよかった(笑)
 でも、この自作透明ドーム、高さがちょっと足りないことが後に判明(涙)

 あと、インストでは、針金(真ちゅう線など)で作るよう指示されている、舵の操作ロッドや、コクピット前方の照星も「ペパクラは、可能な限り全部紙で作る」という私の方針に則り、紙で作ってあります。
 そのくせ紙で作るように指示ある窓は、塩ビ板で作るとは(笑)
 あ、操作ロッドといえば、インストでは、左右同じ形状に作るよう指示されてますが、それだと横舵しか操作できなくなるので(笑)右舷側は縦舵を操作できるように形状を変更しましょう。(作例参照)

HISTORY
 1943年、それまでUボート群の活躍もあってか、この手の特殊潜航艇にはあまり興味を示さなかったドイツ海軍であったが、ノルウェーのフィヨルド内に配備していた虎の子の戦艦「ティルピッツ」が英国の特殊潜航艇「X艇」によって甚大な損害を被った事件を契機に方針を転換、「K-フェアバント(小型潜航艇部隊)」なる組織が編成され、各種の「特殊潜航艇」の開発に乗り出した。

 「ネーガー」はそのデビュー作。
 御覧のとおり、魚雷(Uボートでも使っていた「G7e」 電池式魚雷)2本を縦に重ねて、一方には弾頭の代わりに人間が乗る操縦席を設け、その下に攻撃用の「本物の魚雷」を吊り下げただけ、という良く言えば簡便、悪く言えば「やっつけ仕事」的な構造で、人間が乗る方は機動性を改善するため、舵が増設されている。

 冒頭「特殊潜航艇」と書いたが、実は「ネーガー」に潜航能力はなく、正式には「半潜航突撃艇」と呼ばれ、上部1/3くらいは水面に出たまま。速度も3〜4ノットと極めて低速。
 当初の実験ではは30ノットくらいは出たらしいが、その代わり航続力が足りず、制御性にも問題があった。
 で、色々試した結果、4ノット程度まで速度を落とせば10時間前後の航続力が得られるので、夜陰に紛れて接敵・攻撃する実戦兵器としての運用が可能、ということに落ち着いたらしい。

 まあ、このような生い立ちなので、なにかといえば「凝り性」になりがちなドイツ軍兵器にしては(笑)かなりお粗末な仕上がりで、速度も3〜4ノットで固定。照準器も、コクピットの前方に立っている棒を「照星」として使用するだけ。搭乗員は酸素マスク必須。腕時計型のコンパスを頼りに操縦する、という代物だった。

 怖ろしいのはそのハッチ兼キャノピーである透明ドームの構造で、内部からは開けることができず、搭乗員は無事帰還するか、捕獲されたとき以外、外に出られない!(ひぇ〜!)
 しかも、外部との通信手段を持たないので、救助を求めたり、降伏の意思表示をする手段もないのであった(きゃーっ!)

 そんな訳で、一応「敵を攻撃した後は帰還する」ことが前提になってはいるが、連合国側は、日本の「回天」同様「自殺兵器」とみなしていたそうだ。

 あと、これの姉妹機というか発展型に「マルダー」というのがあり、こちらは人間が乗る方の全長がやや長くなったほか、約10メートルまでの潜航が可能になったが、それ以外の能力はあまり変わらない。
(資料によっては、マルダーの潜航能力を36メートルとしたものもあるが、多分フィートとメートルの勘違いによるものだと思われる。36フィートが約10メートルだから)

 ちなみに「ネーガー」とは「黒人」という意味だが、なんでこんなネーミングになったかと云えば、これの開発者「リヒァルト・モーァ(Richard Mohr)」の名前に由来する、という資料がある。
 「モーァ」が西アフリカに住む民族の俗称でもあり、ここから「黒人」という連想に繋がった…とかなんとか。ホントかな?(笑)

 ともあれ、生産数は「ネーガー」約200隻、「マルダー」約300隻とそこそこの生産数ではある。
 で、イタリアのアンツィオとフランスのノルマンディーで実戦投入。
 上陸作戦を支援する敵艦船の攻撃に使用されたが、結局ネーガーは約120隻を喪失、マルダーは99隻喪失と被害ばかり甚大な割に、記録された戦果は輸送艦2隻、駆逐艦1隻など計6隻と惨憺たるもので、1944年秋以降の作戦投入は中止となった。

 とはいえ、そんな中でも強運な人というのは居るもので、5000トン級の船舶を撃沈し、騎士十字章を授与されたネーガー乗員が記録されている。    


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